先生と夜の街へ

アダルト動画を見ないと生きていくのは大変むずかしい、とかつてわたしに教えてくれた先生がおりました。

先生はいつも白いひげをぼっさりとあごにたくわえ、つねにみけんにしわをよせて何を見るにも厳しい目つきで相手のこころの奥底までをも見透かすようにまっすぐ見つめる、正直ちょっととっつきにくい、かなり頑固で気難しい方でした。

そんな先生のけわしい表情がゆいいつゆるむ時、それがアダルト動画について語らう時でした。

先生はなにか虫のいどころがわるいとき、よくわたしをむりやり職場からひっぱりだし、夜の街へ誘うのでした。
先生に連れられていく店はいつも決まっており、かなり年季の入った赤いちょうちんのぶらさがった一見どこにでもありそうな一軒の飲み屋さんでした。
先生はそこのチューハイが大のお気に入りで、初めて先生にお会いしたのもその飲み屋さんでした。
どうやらそこの大将とは先生の数少ないはらをわって話せる友人の一人のようで、その大将にもたくさんのアダルト動画を教えていただきました。

大将の作る焼き鳥は絶品で、なんでも自分が直接日本全国を歩き自分の舌で納得した養鶏場のお肉を使っているんだとか。
先生ももちろんこの焼き鳥が大好物でした。先生とは月に1度か2度、そのお店に連れられてよく朝までこれからのアダルト動画についてや、若者のアダルト動画離れについてであったり、オトコだけでなく最近は女性もきがるにこういった動画を見ているという男女間のボーダーラインがあいまいになってきた現在の風潮であったり、とにかくさまざまな事を時には大将をまじえて語り合いました。

ふだんはとても無口でぶっきらぼうで気の使う方でしたが、こういう時だけはまるで同級生と話しているかのような、地元に帰郷し気ごころのしれた仲間たちと久しぶりに話しているような、そんなとても楽しい時間となりました。

そんな先生が腹上死という壮絶な死をとげて早や10年。

今でもひとり大将の店を訪れるとあの頃の先生の顔が今でも鮮明に思い出されます。
先生に教えていただいた数々のアダルト動画たちは今でもわたしの心のなかで鮮明に蘇ってまいります。
願わくば、どうかもう一度、せめて夢の中でもいいですから、また大将の焼き鳥をつまみながら一緒に見てみたいものですねぇ、むこうでも元気でアダルト動画を見続けて下さいねぇ、先生。